最近、マラソン中継や街中のランナーを見ていると、カラフルでソールが分厚いシューズを履いている人をよく見かけますよね。「厚底シューズを履くとタイムが縮む」と話題ですが、「普通のシューズと何が違うの?」「誰でも速く走れるようになるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、厚底シューズの仕組みから、身体に与える良い影響・知っておきたいリスクまで、専門的な研究内容を噛み砕いて分かりやすくお届けします!
1. そもそも「厚底シューズ」ってどんな靴?
従来のレーシングシューズは「軽さ重視で底が薄い」のが常識でした。しかし、近年の厚底シューズはその常識を覆す2つのハイテク構造を持っています。
- マシュマロのように柔らかく跳ねる「極厚ソール」 ただ分厚いだけでなく、衝撃を吸収しながら強烈に押し返してくれる特殊な高反発素材がたっぷり使われています。
- 中に埋め込まれた「カーボンファイバープレート」 ソールの真ん中に、スプーンのように湾曲した硬いカーボンプレートが挟み込まれています。これが「テコの原理」や「シーソー」のように働き、コロンと前へ転がるような推進力を生み出します。
2. なぜ速く走れるの?身体へのメリット
「厚底」を履くことで、ランナーの身体や走りには以下のような嬉しい変化が起こります。
- 走りの「燃費」が大幅アップ! 同じペースで走っていても、エネルギーの消費量が約4%〜5.7%も節約(ランニングエコノミーが向上)できます。車の燃費が良くなるのと同じで、後半までバテずにスピードを維持しやすくなります。
- ポンポンと前に進む(滞空時間が長く、接地が短く) シューズの強い反発によって、地面に着いている時間が短くなり、空中を飛んでいる時間が長くなります。大股で弾むように前へ進める感覚です。
- 足首やふくらはぎの負担を肩代わり カーボンプレートが前への踏み出しをアシストしてくれるため、本来ふくらはぎや足首の筋肉が発揮すべき力の一部をシューズが助けてくれます。後半の足の筋肉疲労も溜まりにくくなります。
3. 実は良いことばかりじゃない?知っておきたい「身体へのリスク」
「履くだけで速くなる魔法の靴」に見えますが、身体の使い方や負荷のバランスが大きく変わるため、注意すべきデメリットもあります。
- 着地の衝撃が大きく、股関節・骨盤に負担が集中しやすい 高く弾んで滞空時間が伸びるぶん、地面に着地するときの衝撃力そのものは増えます。また、後ろへ力強く蹴り出す際に股関節を大きく動かすため、股関節や骨盤まわりの故障リスクが高まることがスポーツ整形分野の研究で指摘されています。
- 生体本来の「アキレス腱のバネ」がサボってしまう? 厚底を履くと、着地から蹴り出しにかけて足首が伸びた状態(つま先立ちに近い状態)になりやすくなります。するとアキレス腱が緩んでしまい、身体が本来持っている「腱の伸び縮みで跳ねるバネ機能」が使われにくくなります。厚底に頼りすぎると、ランナー自身のバネ能力が低下する懸念があります。
- 膝への負荷増加とグラつき 足首の負担が減る一方で、膝関節にかかる負担が増加することがあります。また、ソールが高くて柔らかいぶん、着地時のバランスを保つのが少し難しくなります。
4. 誰でも効果が出る?実は「フォームの相性」がある!
研究によると、厚底シューズで劇的にタイムが伸びる人がいる一方で、実はあまり効果が得られなかったり、逆に疲れやすくなってしまう人もいます。
- 効果を最大限に受けやすいランナー 着地したときに、足首を直角近く(つま先をやや上げた状態)にキープできる人です。自分のアキレス腱のバネもしっかり使いつつ、シューズの反発力を上乗せできるため、大きな推進力が生まれます。
- 恩恵を受けにくく、注意が必要なランナー 着地の瞬間に、**膝が内側にグッとねじれやすい人(内旋しやすい人)**です。厚底の不安定さも合わさって脚のねじれが強まり、シューズの反発が推進力に変わらないばかりか、膝の内側などを痛める原因になります。
5. まとめ:上手に付き合うための「履き分け」がカギ!
厚底シューズは間違いなくランニングのパフォーマンスを高めてくれる強力なギアですが、頼り切りになると故障のリスクや自身の筋力低下を招く恐れがあります。
おすすめは「履き分け」です! 普段のジョギングや基礎トレーニングでは従来型のシューズや薄底シューズを履いて「自分の脚力や腱のバネ」を鍛え、ここぞというスピード練習やレース本番で厚底シューズを投入することで、怪我を防ぎながらその恩恵を最大限に引き出すことができます。



